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全国の指定自動車教習所に発行されている 『自動車学校』 という書籍から、安全運転中央研修所の新任教習指導員を指導する教官からのメッセージが掲載されていました。

安全運転中央研修所の新任教習指導員課程と都道府県の公安委員会が行う新任教習指導員講習と若干違う講習システムになっています。

ただし、教習指導員に成るための学習内容等は同じですから、これから教習指導員を目指される方には大変参考になる内容です。
安全運転中央研修所教官からのメッセージ    新任教習指導員(普通車)課程を終えて
1 はじめに

七月に入り梅雨が舞い戻ったように雨の続く毎日。
新任教習指導員(普通車)課程が修了し、今日でちょうど1週間が過ぎたところである。
現在、私が携わる研修は第3期 新任大型二輪車技能検定員・教習指導員課程である。
実技のほとんどが雨という悪条件の中、研修生(33名)は大型自動二輪運転者の指導者と成るために一生懸命研修をこなしている。

今回の課程の研修生は平均年齢が40歳を超えているので体力的にも大変であるが、夜遅くまで審査に備えた勉強もしており、頭が下がる思いである。

この大型自動二輪課程の研修生の姿を、今回のテーマである新任教習指導員課程の研修生に見せたいものである。
2 本課程の意義と目的

この研修課程は18日間続き、第3週目には各項目毎の審査が待っている。
その審査細目は、運転技能、教育知識、技能教習法、総合確認審査と18日間の研修期間中の評価点があり、そのすべてに合格しないと修了証は交付できない。
いわゆる都道府県の公安委員会で行われる審査と同じである。
ただ違うところは各細目毎の一部合格制度という形は採用されていないので、修了証が交付されるか、されないかのどちらかである。

この修了証で免除される細目は、
・教習指導員として必要な自動車の運転技能
・技能教習に必要な教習の技能
・教習指導員として必要な教育についての知識である。

当然、過去の新任教習指導員課程では、審査不合格者または課程途中で勉強が嫌になり脱落した者等、中途退所した研修生も少数ではあるがいた。

入所前に、この全ての審査に合格できるレベルの研修生はまずいない。
入所後、できる限り早い時期に研修生はその事を知る必要がある。
そして研修生は効果測定等を通じて科目毎のレベルを正しく認識し、日々の努力で勉強不足部分を克服していかなければならない。
そのため私たち教官は研修生に苦手な部分を早く気づかせ、明確な助言を与えている。
そうしなければ18日の短期間では、すべての審査に合格できるレベルに達することができない。
それ故、私たち指導する教官と研修生は、一日も無駄に出来ないのである。

そのため、この課程に携わる教官は、研修開始およそ1ヶ月前からこの仕事に取りかかる。
まず初めに理論教官と実技教官は、既存のカリキュラムを基に綿密な18日間の 「研修計画表」 を作る。
そしてそれをもとに研修を実施する。

以下、省略
3 研修課程の目標

本課程の研修目標は、「資質の高い教習指導員の育成」である。
具体的には
○教習指導員としての社会的使命の自覚
○教習指導員としての模範的な態度
○社会人としてのモラルの向上
○豊富な特殊環境運転からの体験と知識
○参加意識を高める討議式グループ検討
○長期研修生活で必要な人間関係に確立
○研修修了後も永続的な自己研鑽の必要性

以上を18日間の「研修計画表」に折り込み、私たち教官は研修を進めていくのである。

一部、省略

それでは3週間の研修課程の内、一番大事な、1週間目についての内容と出来事を述べる。
これからの内容が、今後この課程を受講する研修生、またはこの課程に研修生を送り出す教習所の事前教養担当者の方々に参考になれば光栄である。
4 初期の目標

「ドライバーから教習指導員への目覚め」である。

(1)入所式では
入所式では18日間の生活上の諸注意、実技研修、理論研修時の注意事項等と一般課程とほぼ同じ内容でオリエンテーションを行う。
しかし、教習指導員に成るための研修課程(仕事)であるが、過去の入所時の質問では信じられないものがあった。
例えば、観光は?カラオケは?飲酒は?外泊は?修了式は何時に終わる?等の耳を疑いたくなる内容が有り、先が思いやられる。
そう言った質問に対しては笑顔で「荷物まとめて帰っていいよ。」と返答する。
初日なので、それ以上は言えない。


(2)実技研修では
 
ア 日常点検で教官が困る研修生
  
日常点検のやりかたが全く分からない。
  ボンネットの開け方が分からない。
  ボンネットを力ずくで閉めロッドを曲げた。
  各部の名称及び役割が分からない。(特に女性に多い)

点検やメカニズムが苦手な研修生に対しては休憩中を使い、しっかり復習することを指示、後日再確認する。


 
イ 基本走行で教官が驚く研修生
  
運転姿勢がなってない。
  半クラッチの使いすぎでクラッチが焼ける。
  片手ハンドル等の個癖がひどい。
  変速操作がスムーズに出来ない。
  ノッキング、エンストをしても平気な顔でいる。
  「限定解除をして2週間」と謝る。

以上が今までの基本走行における驚くべき観察結果であるが、中には半クラッチやエンジンブレーキが分からず車内を探す信じられない研修生がごく少数ではあるがいた。
いわゆる運転免許証はあるが教習指導員としての運転レベルではない。
これでは教習生の模範運転者になれるはずがない。

この運転が技能教習ではもっとも大切であり、技能指導の根底となすことを、今一度しっかりと研修生が自覚する必要がある。
運転が出来ない教習指導員など聞いたことがない。
運転が出来そうという曖昧なものではなく、出来なければならないのである。

そしてこれらの運転の苦手な研修生には、実技研修のなかで出来る限り、出庫や納車時の運転をするように指示し、少しでも運転に慣れさせること位しか此処では出来ない。

(3)理論研修では(レベルチェック)
入所後すぐに教則、関係法令、教育知識等のレベルチェック(事前教養効果測定)を実施するが、合格点を取れる研修生は数人である。
三分の一以上の研修生は箸にも棒にもかからない点数を取る。
特に、教則、関係法令は正誤式の問題集で勉強してきているので、論文式になるとほとんどが書けないし、誤字脱字も多い。
このレベルでは教習生に学科教習は出来ないし、教習業務の間違いにも気づかない。

また正しく理解されていない教育方法では教習生に信頼される教習指導員に成るには程遠い存在である。
と言うことは、事前教養の勉強方法が教習を行う為の教習方法の理解に当てられず、審査合格の近道に重点が置かれ「合格本位」の勉強になっている傾向がある。

また、中には現場事前教養が建て前で終了し、入所してくるものもいる。
将来、教習所を担う教習指導員になるには「急がば回れ」である。


(4)夜間の検討会では
 
ア グループ検討
 イ 高まる自主性
 ウ 複数学習法
 エ 乱れる調和と強い絆
人と人とのぶつかり合いがお互いの性格や立場を理解させ、自分本位の行動や発言を少なくする。
そして徐々にではあるが、自分自身を客観的に捉えることができる人間になる。
その客観性こそが相手を思いやる気持ちにつながる。
これが研修の大きな狙いである 「ドライバーから教習指導員への目覚め」 である。

このように [夜間の検討会] が色々な効能を秘め、研修生をいつの間にか包容力のある人間としてつくり変え、そして他人を尊重できる寛容な人間として育てていくのである。

これらの人間的成長は、今後教習生への教習法や接遇に通じるものである。

(5)個人面談では
第1週目の後半に、研修生一人ひとりに対し、理論教官と実技教官が18日間の研修に対する意気込み、教習指導員の志望動機、事前教養効果測定結果、事前担当者の名前と事前教養の内容等を質問する。

(主な面談の質問と回答例)
意気込みに対する質問は、ほとんどの研修生が18日間の研修をまっとうすることを確約する。

○期待できる志望動機では
 「人に物を教えることが好き」 「交通安全に寄与したい」 という返答が大半である。
 「その為にはどうすれば良いか」 などの具体的内容の質問には、ほとんど答えられない者がいる。
いわゆる面接の為の回答であり、建て前的な答え方である。

教習指導員の仕事が何かをしっかり考えて欲しい。
例えば審査合格を最終ゴールと考えている研修生は、審査合格後、本来の教習が出来るかどうか疑問である。
審査合格はスタート台であり、そこからが本来の勉強である。
その位の気持ちがないとこの仕事は長続きしない。

○意外な志望動機では、
 「親や親族の薦め」
 「何となく」
 「他に就職がなくて」
 「カッコ良さそうだから」
 「楽そうだから」
などの迷惑な回答があった。

これらはある意味、研修生の本音だろう。
しかし、のっけから簡単にそう言われると、18日間の研修課程について来れるか否か心配になる。

事実この様な回答をした研修生の中には、勉強の量や深さに音をあげて、今後の研修に対しての不安を相談に来るケースがある。
励ましとねぎらいの言葉は掛けられるが、やはり研修を続けるか止めて家に帰るかは本人次第である。
 「続けるのも地獄なら止めるのも地獄である」
5 終わりに

 「中央研修所に行けば何とかなる」 という安易な気持ちでここに来たのであれば、言語道断である。
しっかりとした「理想とする教習指導員像」と「教習指導員審査に合格する」という信念を持って来て欲しい。
またそういう気持ちがないと、18日間がただの苦痛な日々になるであろう。

最後に、この研修課程を受ける研修生及び事前教養担当者へ一言。
本来の目標に到達できるには、
○社会人としての常識と道徳を兼ね備えること
○自動車に興味があり、運転は完璧であること
○『講習ハンドブック』の内容を正しく理解しておくこと
○教則、関係法令を正しく理解しておくこと

安全運転中央研修所の門を潜るには、以上をしっかり身につけた者であることを切に願うものである。
逆に勉強不足の者は18日間、ほぼ毎日を徹夜で過ごすことになる覚悟でいて欲しい。
文献

『自動車学校』 平成15年 9月号 (第三十九巻 第九号)
安全運転中央研修所教官からのメッセージ  「新任教習指導員(普通車)課程を終えて」
発行所 (社)全日本指定自動車教習所協会連合会

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